親の対応

過干渉から生じる不登校もある

学習塾を経営していた中で、多くの保護者の方と話してきました。

プレーヤーとして仕事ができる人と、子育てが得意かという点は相関性は全くありません。
(リーダーとして仕事ができる人は、子育てが得意かもしれません。相手の気持ちを考えますので)

その理由は、例えばメーカーでのモノづくりや、会社での組織の中におけるサービス等で不具合が起きないようにするための方法と、人を育てる方法は全く逆だからです。

その違いに気づいていない親は、子供をますますうまくいかない方向にもっていってしまうことがあります。
そして子供のとる抵抗の一つの形として、不登校になることもあります。

不登校自体は別にまずいことではありません。
学校というあのような特殊な空間には向き不向きもあります。
特に公立中学校は、軍隊式の学校がいまだに多く存在します。

もちろん、不登校になるのは親に100%問題があるというわけではありません。
ただ、親が原因の時もある、そのケースについてお話します。

子育てが得意だろうとそうでなかろうと、子供には一人前になってほしいとはだれもが思っていると思います。

ここでは、

  1. 不登校という形の意味
  2. 親の何がまずいのか
  3. どのように接すれば良いのか

この順番にお話しいたします。

1.不登校という形の意味→親の自覚のない過干渉の可能性もある

不登校というのは、子供からの親へのメッセージの場合もあります。

ところが親によってはそれを自分のせいだと考えず、学校や友人などのせいにしてしまう場合もあります。
逆に、親が自分自身を責めてしまい、さらに子供を束縛するという場合もあります。
自分を責める必要はなくて、どう対応したらいいのか考えることが大事です。

子供自身が、本当は学校に行きたいと思っているのに、行くことができない子は、本当は行ける方がいいわけです。

自分なりの理由があっていかない子もいますが、それはそれで苦労はします。
それは、理不尽なことも含めて社会性が身に付きにくくなるからです。
学校には行っていないけど、スポーツや趣味など別のコミュニティに日々参加しているのであれば、まだそれはいいと思います。

不登校といっても、期間の長い短いもありますし、どの学年なのか、ということもあります。

不登校で一番多いのは中学生です。下の資料によると5%ですから、1クラス35人とするとクラスに1人~2人いることになります。
(文部科学省「令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について 」より)

小学生 1.7%(前年度1.3%)
中学生 6.0%(前年度5.0%)
高校生 3.2%(前年度2.6%)

すべての学年で増加していることがわかります。

不登校になる理由は、
小中学生の場合

無気力・不安 51.8%
生活リズムの乱れ 11.4%
いじめを除く友人関係 9.2%
親子の関わり方 7.4%
該当なし 5.0%

(この統計で気になるのは、「いじめを除く友人関係」とわざわざ書く理由はなんなのかは気になります)

ここで見ると、「親子の関わり方」は1割程度で、大半は「無気力・不安」という形です。
では、なぜ「無気力・不安」になっているのかというところに本当の原因があります。
そこが、子供も気づいていない、親が原因であることも多いことについてお話します。

2.親の何がまずいのか→過干渉

そもそも、子供に興味をもっていない親というのはそれほど多くはありません。
もちろん、子供が自分に興味を向けるために、なんらかの行動をとるということもあります。

そういうことではなく、過干渉のために不登校になるということのケースは結構多いです。
「もう、いいかげんにしてくれ」という子供の無言の抵抗です。

親が子供のインターネット上の投稿などを見るのは絶対にNGな行為の一つです。
アカウントを知っているからこっそり見るというのは本当にまずいです。

親は子供が何か変なことに巻き込まれないように、というのはわかります。
でも、見てもいいものと見てはいけないものというのがあります。
一番、子供が見られたくないものです。
そして、親が隠していても、見られていることを子供は気づきます。
気づいた子供は、自分は信頼されていないんだと感じ、自信をなくすこともあります。

最初の方に、仕事の方法と子育ては全く逆だと書きました。

仕事は、いかにトラブルなく毎日を運行させるかにかかっています。
不具合が起こりそうな部分や、クレームが出たところなどに対して一つずつ対処することで良いサービスが出来上がります。

そのため、ある目的に対して、問題点を見つけ出し、それに対処するということが基本ルーチンになります。
細かい人や、心配性、神経質な人は、「優秀なエンジニア」や「優秀なビジネスマン」になれる可能性があることになります。

しかし、子育て、特に子供の勉強に対しては全くその方法は使えないことが多いです。

父親に多いのですが、テストの点数が悪いと次のことをやらせます。もしくは、親が干渉してその形で進めます。

①テストの点数が悪い→②何が悪いのかを見つける→③悪い点を直す→④ほかに悪くなりそうな点はないか予想する→⑤悪い点を直す→⑥完璧を目指す

(②~⑤を繰り返す)

商品やサービスの不具合を直すのと同じ方法をとろうとしてしまいます。
特に自分自身がその方法で解決してきた場合はタチが悪いです。
自分がそうやってうまくいったのだから、子供もそうすればうまくいくと考えてしまいます。

理屈ではそうでしょう。確かにその方法で完璧を目指せる子は目指せばいいです。
ところが、それが合わない子というのもいるのです。

不登校になっている子の場合は、特にこの方法を押し付けられていることが多いです。
そして、親はそれが正しい方法だと信じているから、まったく改善しません。

なぜ、子供がこの方法で嫌がるかといえば、そもそも、「その方向に進みたくない」からです。
どうして、その勉強が必要なのか、ただ、「勉強しろ」でいうことを聞くのは小学3~4年生くらいまででしょう。
高学年になると難しいでしょう。
中学生などまず、言うことを聞かないでしょう。

親は子供の「不具合」を直そうとやっきになるために(よかれと思って)、子供はますます苦しくなるわけです。
でも、親が自分のためにやってくれていることもわかるから、言えなかったりします。

仲が悪いようで、別に仲が悪いわけではないんです。
ただ、その方法を押し付けられることが子供にとっては嫌なんです。
例え、正しい方法だとしてもです。
それは子供にとっては正しい方法ではないのです。

3.どのように接すればいいのか→手間やお金がかかってもいいから子が望む環境を用意する

子供が高校や大学、もしくは他の進路などでもいいのですが、どういう進路を進みたいのかを聞きます。
そのために必要なことを準備してあげたらいいです。

例えばですが、芸術科のある高校に行きたいということであれば、たとえ1年生でもいいのですが、学園祭などなんらかのイベントなどに連れていくようにします。
ある研究をしている大学に行きたいというのであれば、中学生には早いように感じるとは思いますが、オープンキャンパスや学園祭に連れて行けばいいのです。

また、何かを習いたいというのであれば、例え無駄になってもいいから学ばせてあげたらいいのです。

何がいいたいかといえば、その子供が進みたい道に進むための環境をそろえてあげることが大切だということです。

その高校なり、大学なり行ってみることで、もしかしたら何か勉強をしようとか、学校に行こうかなとか何か必要性が見えてくるかもしれません。
逆に、見てみることで、これではないということで自分でその道を閉ざすかもしれません。

それも、前進です。
親の望む道が正しいことは、あまりないと思っておいた方がいいです。
親は子供のことをよくわかっているようで、実は内面まではわかっていないことも多いです。

結局、親の考えが正しく、その道に進むとしても、子供が気づくことが大切です。

そして、親はどうしても失敗させたくないので、「あれは大丈夫?」「これは大丈夫?」「あれはやったの?」「これはやったの?」と言ってしまう親が多いです。

それは、子供が失敗するチャンスを親が奪っているのです。

子供に失敗してもらいたくないんじゃないんです。親は、どうしても楽して子供には苦労させたくないと思う、その気持ちが子供を弱く、そして自信も奪っているのです。
少し前の不登校の理由で、「無気力・不安」とありましたが、その大半は一番身近な親が原因になっている可能性が高いというのはそういう理由です。

まず、失敗するとわかっていても、失敗させることです。
もちろん、本人や他人の命に関わることは言わないとまずいでしょう。
ただ、そんなケースは殆どないはずです。

過干渉、過保護になっている親のほとんどが「自分は子供に自由にやらせていて、ほとんど言わないようにしている」と思っています。

だから、タチが悪いのです。
自分がやっている自覚がないから、やり続けてしまうのです。
自分がどう言っているかどうかは、客観的に見ている人がいれば、その人に聞いてみるといいです。

自分を冷静に見て、子供にどんな言葉を今日かけただろうかと振り返ってみるといいです。
テスト前にはどんなことを言ったのか、テスト後にはどんなことを言ったのか。

少し振り返ってみると、何か気づくことがあるかもしれません。

どんな親も、子供には幸せになってもらいたいと考えています。
でも、その方法が自分の時の方法と同じであることはあまりない、ということだけお伝えしたいと思います。

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